『絵その2』
親父は何故か、富士山が好きだった。
常々、隠居したら富士の裾野に家を建てて、日本画を描いて暮らすと云っていた。
旅行と云う名を借りた「三波一門」夏合宿は
毎年、静岡県熱海温泉で行われた。
『スケッチ』
笑いの特訓?(人は宴会とも呼ぶ)の合間、
富士山近辺にスケッチに出たりもした。
でも心の底では子供らしく「富士急ハイランド」で
遊びたいな〜と思いつつ、逆らうと後が怖いので同行した。
『絶景』
山間は空気も素晴らしく、そして絶景だ。
親父と私は、筆さばきも見事に、
その絶景を平面な紙の上に新たなる色彩として蘇らせる。
気分はもうすっかり「横山大観」先生である。
画を描かない母や弟子連、マネージャー諸氏は
「峠の釜めし、オカマめし〜ぃ♪」
などと訳の分からぬ唄に興じている。
私と親父は一心不乱だ。
『冷え』
夏期とは云え、山間部の涼しさは時間の経過と共に都会人に対し、
容赦なく「冷え」を与える。
つまり、小便をもようしたわけだ。
親父は筆を止め、弟子一同に向かい
「おい!!小便がしたくなった。どこかにトイレは無いか?」
弟子一同「こんな山にトイレは無いっす。
俺たち、そこのガケみたいな処に放尿しました。
そこでしたらどうです?」
親父「人、いねぇだろうな?」
弟子一同「大丈夫っす。誰もいないっす!!」
『臨時トイレ』
私と親父は違法な立ち小便をする為、ガケっぷちに立った。
深々とした霧が立ちこめ、近くに鳥のさえずりも聞こえる。
する事がする事でなければ、とても美しいシチュエーションなのに…。
しかし、生理現象には勝てず、親子はガケから放尿した。
『着地音』
しかし、しかしである。
ここはガケのはずだ。
なのに小便の着地音が異様に早く聞こえる。
この霧の下はガケではないのか?
コントの様に霧が引くと、そこに段々畑があらわれ、
農具を持った、オバサンがじーっと親子のイチモツを比べてる。
無言だ。
『そして…』
男性諸氏はおわかりと思うが、開いた尿道を閉じる術もなく、
ただ放尿するだけだった。
無論、親子は無言赤面で走り去る。
後で、弟子一同が大目玉をくらったのは云うまでもないだろう。
正に「スケッチ描かずに、恥かいて逃走した」とはこの事だろう。
管理人…↑「スケッチ描かずに、恥かいて逃走した」なんて言葉あった???(笑)
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